「考える」と「決める」は違う。自分を動かすための『意識・意志・思考』の役割分担
「やろうと思ったのにできなかった」のはなぜか? それは「思考」と「意志」を混同しているからかもしれない。心の機能を「意識(ステージ)」「思考(ツール)」「意志(エネルギー)」の3つに分解し、それぞれの役割と正しい連携方法を解説。自分というシステムを意図通りに操縦するための基礎知識。
はじめに
「もっと考えなさい」と言われても、行動できない。「意識を変えよう」と思っても、長続きしない。
もしそんな悩みがあるなら、それは心の中にある3つの機能をごちゃ混ぜにして使っているからかもしれません。その3つとは、「意識」「意志」「思考」です。
これらは役割が全く違います。これを理解することは、自分という人間を操縦するための「説明書」を手に入れることと同じです。
1. 3つの言葉の定義
まずはシンプルに定義しましょう。
① 意識(Consciousness)=「舞台(スクリーン)」
- 役割: 現状を「知覚」する場所。
- 機能: 「あ、雨が降っている」「お腹が空いた」と気づくこと。
- 特徴: 受動的。ライトで照らされた範囲のようなもの。
② 思考(Thought)=「カーナビ(地図)」
- 役割: 問題解決のための「計算・シミュレーション」を行う機能。
- 機能: 「どうすれば早く着くか?」「雨だから傘が必要だ」と論理を組み立てる。
- 特徴: 道具(ツール)。命令がないと動かない、または勝手に暴走する(不安など)。
③ 意志(Will)=「ドライバー(ハンドル)」
- 役割: 方向を決め、エネルギーを注ぐ「決定」の力。
- 機能: 「よし、行くぞ」「傘を持って出かけよう」と決断する。
- 特徴: 能動的。思考や行動のスイッチを入れるエネルギー源。

2. うまくいかない時のパターン
この3つのバランスが崩れると、不具合が起きます。
「思考」過多 × 「意志」不足 = 悩み・不安
カーナビがルート検索ばかり繰り返して、車が一向に発進しない状態。「どうしよう…」と考えるだけで、決断(意志)がないため動けません。
「意志」過多 × 「思考」不足 = 無謀・空回り
地図を見ずに「気合で行くぞ!」とアクセルを踏む状態。エネルギーはあるが、効率が悪く事故(失敗)を起こしやすい。
3. 正しい連携フロー
成果を出す人は、この3つを正しい順序で連携させています。
意識(気づく)
「今の現状はこうだ」「ここが問題だ」とフラットに認識する。
意志(決める)
「ここを目指すぞ」「これを解決するぞ」と方向を決定し、スイッチを入れる。
思考(考える)
「そのために最適なルートは?」「手段は?」と具体的な策を練る。
結論:「思考」に使われるな、「意志」で使え
多くの人は、勝手に湧いてくる「思考(不安や雑念)」に振り回されてしまいます。しかし、思考はあくまで「道具」です。
主人は「意志」です。「今、何を考えるべきか?」を意志の力で決定し、思考という優秀なナビに計算させる。そして、その結果を意識のスクリーンで冷静に観察する。
この司令系統を整えるだけで、迷いは驚くほど減っていきます。
