「答え」はAIに任せろ。ドラッカーが最晩年に遺した「正しい問い」と「真摯さ」の教え
AIが普及する現代、私たちは「いかに早く正解を出すか」ばかりを競っていないだろうか。しかし、経営の神様ピーター・ドラッカーは「最も危険なのは、間違った問いを発することだ」と警告していた。AIには代替できない人間の役割である「問いの設定」と、強力なツールを持つ今だからこそ問われるリーダーの資質「真摯さ(Integrity)」について解説する。
はじめに:AI時代の「賢さ」とは?
AIツールの進化により、私たちは一瞬で「答え」を手に入れられるようになりました。 しかし、ここで立ち止まって考える必要があります。
「答えを出せる人」が賢い時代は終わりました。これからは、「何についても答えるAI」に対し、「何を答えるべきか」を指示できる人だけが価値を持ちます。
経営の神様、ピーター・ドラッカーが最晩年に遺した警告は、今の私たちにこそ深く突き刺さります。
1. 重要なのは「答え」ではなく「問い」
ドラッカーはこう述べています。
「もっとも重大な過ちは、間違った答えを出すことではない。間違った問いを発することだ」
AIは、与えられた問いに対して完璧な答えを出します。 しかし、「そもそも、何を問うべきか?」を決める機能はAIにはありません。
❌ 間違った問いの例:
「どうすれば、バレずに利益を上げられるか?」
→ AIは、法すれすれのグレーな手法を提示するでしょう。
✅ 正しい問いの例:
「どうすれば、顧客の生活を豊かにし続けられるか?」
→ AIは、持続可能なビジネスモデルを提示するでしょう。
「問い」の質が、アウトプットの質、ひいては組織の運命を決定づけます。
2. テクニックよりも「真摯さ」
ドラッカーがもう一つ、リーダーの条件として絶対不可欠だと説いたのが「真摯さ(Integrity)」です。
AIという強力な力を手に入れた今、私たちはそれを悪用することも、手抜きに使うことも簡単です。だからこそ、その人の「人間としての在り方(真摯さ)」が露わになります。
自問すべき問い:
- 部下や顧客を「道具」として見ていないか?
- 目先の数字のために、本質的な価値を犠牲にしていないか?
ドラッカーは「真摯さだけは習得できない。最初から連れてこなければならない」と言いました。
AI時代において、スキルや知識はアップデート可能ですが、この「真摯さ」というOSだけは、人間が自ら保ち続けなければならない最後の砦なのです。

3. 私たちが発すべき「問い」とは
では、私たちは今、AIや自分自身にどんな問いを投げかけるべきでしょうか。 ドラッカー流に言えば、それは以下の3つに集約されます。
① 「私たちの顧客は誰か?」
(ターゲットの再定義)
② 「顧客にとっての価値は何か?」
(提供価値の再定義)
③ 「我々の事業は何か?(何であるべきか?)」
(ミッションの再定義)
これらは、AIが勝手に決めてくれるものではありません。 リーダーであるあなたが、真摯さを持って決断し、問い続けなければならないことです。
結論
「答え」はコモディティ(ありふれたもの)になります。 しかし、「正しい問い」と「真摯な姿勢」は、永遠に希少な資源であり続けます。
AIに何を聞くか。そのプロンプトの一つひとつに、あなたの生き方と哲学が試されているのです。
