「環境が悪い」と嘆く人は多いが、環境とは単に与えられるものではない。環境には、そこから恩恵を受ける「受益者」のフェーズと、他者のために土壌を整える「提供者」のフェーズがある。自分がどちらの立場にいるかを認識し、「探す側」から「創る側」へシフトすることの重要性と、その両面性について考察する。
はじめに
「もっといい環境で働きたい」
「あのチームの環境が羨ましい」
私たちはつい、環境を「どこかから与えられるもの(天気や場所のようなもの)」として捉えがちです。 しかし、ビジネスや人生において、「環境」には明確に2つの側面があります。
それは、環境を「与えてもらう側(受益者)」と、「提供する側(提供者)」という視点です。
1. 受益者の視点:環境は「選ぶ」もの
若手や学び始めの段階では、私たちは皆「受益者」です。 植物が肥沃な土壌を必要とするように、自分を成長させてくれる場所を探す権利があります。
受益者としての2つの選択肢
- 選ぶ権利:自分の価値観(Being)に合わない場所、成長できない場所からは、逃げる(移動する)ことも立派な戦略です。
- 変える努力:与えられた環境の中で、より良くするために提案したり、工夫したりする「自ら変える」アクションも、受益者としての責務です。
しかし、いつまでも「誰かが良い環境を用意してくれる」のを待っていてはいけません。
2. 提供者の視点:環境は「創る」もの
リーダー、親、指導者、あるいはベテランになった時、役割は反転します。今度はあなたが、誰かのための「環境(土壌)」にならなければなりません。
提供者としての2つの責務
- 与える義務:部下が挑戦できる心理的安全性を作る。子供が夢中になれる機会を用意する。
- デザインする力:「どうすれば人が育つか?」「どうすれば熱狂が生まれるか?」を設計する。
以前紹介した『社長改造』の事例も、社長が「自分の性格」を変えることよりも、「メンバーが輝く環境(役割分担)」を創ることに注力した結果、組織が再生しました。
3. 視点を往復させる
重要なのは、この2つを状況に応じて使い分けることです。
学ぶ時
「貪欲な受益者」であれ:
良いメンターやコミュニティを徹底的に利用させてもらう。
導く時
「寛容な提供者」であれ:
自分の利益よりも、他者が育つための土台作りに徹する。

両手で苗木を守り育てている人の手(提供者)と、その木陰で休む人(受益者)のイメージ
結論:不満があるなら「創る側」へ
もし今、あなたが所属する環境に不満があるなら、それは「そろそろ受益者を卒業して、提供者に回るタイミング」なのかもしれません。
「良い環境がない」と嘆くのをやめ、「私が良い環境になろう」と決めた瞬間、景色はガラリと変わります。
あなたは今、環境を「もらう側」ですか?
それとも「創る側」ですか?
